2011年12月25日

ウィローパターンの悲恋物語

欧州の陶磁器によく登場する

ウィローパターン ( 柳の図 ) という絵柄がある。 

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ブルーウィロー八寸皿 ( 20世紀初頭、デルフト )

一般的には楼閣、塀、橋、三人の人物、船、島、

そして柳の木が盛り込まれ、コバルト ( 青呉須 ) の

ディキャル ( 転写技法 ) の作品なので、欧米では

青い柳 = ブルーウィローと呼ばれています。

身近なところでは英国の老舗紅茶ブランドの

フォートナム&メイソンやトワイニングの茶器に

採用されてるのはご存知の通りなのですが、

欧米で人気のこの絵柄、よく見るとなんとも

オリエンタルな雰囲気でしょ。

この絵柄に隠された物語を紹介します。

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story by アートギャラリー甲比丹 無料鑑定 出張鑑定 骨董 古美術 株式会社キーアクト
実はこの絵柄、遠い昔の中国の悲恋物語がモチーフになってます。

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昔々の中国、豪邸に住む政府の高級官吏の

娘でクーン・セ ( koong-se ) という名の

大変美しい女性がいました。 

彼女はお屋敷で経理担当秘書官として

雇われていた身分の低いけど働き者で

有能なチャン ( Chung ) という若者と

恋に落ちてしまいます。 しかしそれは

身分が違う二人の禁断の恋だったのです。

それを知った高官の父親は激怒し、

チャンを解雇し屋敷の周りにフェンスを

張り巡らして二人が会えないようにする

ばかりか、クーンセを身分の高い青年将校

タージン ( Ta-jin ) と無理矢理結婚

させようとします。 美しい娘と結婚

できると喜んだ軍人タージンはプレゼントの

宝石箱を手に船でお屋敷に到着します。

結婚式の前夜、チャンは屋敷の侍女たちの

手引きで密かにお屋敷に忍び込みました。

チャンは“ 一緒に逃げよう ” とクーンセを

誘い二人は屋敷を抜け出しますが、途中、

父親に見つかってしまいます。 二人は懸命に

橋を渡り逃げ父親は追いかけます。 

なんとか小船を見つけた二人は、屋敷を離れ

遠くの小島に駆け落ちをします。

数年間二人は幸せに暮らすのですが、

とうとう恥をかかされた青年将校タージンに

居所を見つかってしまい、チャンは捕まり

殺されてしまったのです。 それを知った

クーンセも自ら命を絶ちます。 

その純愛を知った神様は二人を二羽の小鳥

に変え、永遠の愛を与えました。



という戯話なのですが、その場面、場面が

このブルーウィローというお皿の絵柄に

表現されているのです。 橋の上の三人は

宝石箱を持つチャン、純潔を表す糸巻きを

持つクーンセ、そして逃げる二人を鞭を

振り上げて追いかける官吏の父親の図。

また、左上の二人が逃げるのに使った船と

逃避行先の島、そして仲良く戯れて飛ぶ

二羽の小鳥も描かれています。 

もちろん、名前の由来となった柳の木や、

大きな屋敷、フェンスなどもありますね。


よく見るこのウィローパターンには

かくも多くの中国の悲恋物語が

隠されていたのです。 

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違うパターンのブルー&ホワイト七寸皿 ( 19世紀、デルフト )

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このブルーウィローの絵柄は世界中の有名

陶磁器メーカーが昔から使っていますので

アンティーク好きの人なら一度は目にした

ことがあると思うのですが、この絵柄には

中国の悲恋物語が隠されていることを知って

いる人はウィローパターン通と言えます。


でも、実はこの物語には更に裏話があります。

ここからが知る人ぞ知る、のお話。


実はこの物語は中国とは全く関係が無く、

絵柄の考案者は英国のローヤル・ウースターから

独立しカーフレイの窯を買収したトーマス・

ターナーという人物が1780年に考案したと

されています。 その後、カーフレイ窯の衰退に

より、実際に最初の量産体制をとったのは

ミントン社のトーマス・ミントンだと言われて

います。 トーマスは彼は自社の製品の販売促進

のために絵柄にストーリー性を持たせたのが

この悲恋物語の始まりらしいのです。

やはり当時はシノワズリー ( 東洋趣味 ) が

流行っていたからなのでしょう。

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その後、この絵柄は大成功を収め、英国の

ウースターやスポード、ウェッジウッドなど

有名メーカーは言うに及ばず、オランダは

デルフトのルグー窯などでもいろんな

パターンのブルーウィローが焼かれ最終的

には日本にも伝播して大戦戦前後から

日本製のブルーウィローもたくさん焼かれる

ようになり、現在も世界中で使われている

大ヒットデザインなのです。 おわり 

posted by キャプテン at 14:08 | Comment(0) | 商品紹介
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